2020年から、プログラミングの必修化が小学校で始まり、プログラミングに関する関心が高まってきていると思います。
テレビやニュース記事でも、プログラミング必修化の話題や、プログラミング関連のニュースが取り上げられることが多くなってきた印象があります。
でも、どうして小学校でプログラミング教育が必修化されていくのか、まだ良く分かっていない、もっとよく知りたいという親御さんやお子さんもいるのではないでしょうか?
そこで、今回は、プログラミング教育が小学校で取り入れられる目的を、シンプルに3つ解説していきたいと思います。
プログラミング学習をする理由を理解しておくことで、どういったポイントをおさえて学んでいけば良いか把握していくことができると思います!
目次
小学校のプログラミング教育はいつから?
まずは、小学校でのプログラミング教育がいつから必修化されるか見ていきたいと思います。
小学校では、2020年度からプログラミングが必修化されていきます。
ちなみに中学校では2021年度、高校では2022年度からプログラミング教育が始まっていきます。
どのようなプログラミング教育あるかというと、例えば以下があります。
- 算数:正多角形の作図
- 理科:電気の性質の学習
- 音楽:音を組み合わせてメロディを作る
- 総合:まちの魅力と情報技術の探求型の学習
このように、いくつかの既存の教科の中で、プログラミング学習を行うことになります。
※プログラミングという新しい教科が作られるわけではありません。
そのため、子どもたちは、プログラミング学習も行いますが、同時にプログラミング教育を通じて、その教科の内容も深く理解していることが期待されています。
こちらの記事でも、いつからプログラミングが始まり、小学生でプログラミング教育を始めるのにあたって必要な準備の内容を詳しく解説してしています!
プログラミング教育をする3つの目的
では、なぜプログラミング教育が必修化されるのか3つの目的を解説していきたいと思います。
プログラミング教育の目的
文部科学省が発表している「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」では、 プログラミング教育の目的が示されています。
- 論理的思考力(プログラミング的思考)の育成
- 情報を活用するための知識や能力の習得
- プログラミングを通じて、各教科の学びを深める
これらの目的を一つ一つ見ていきたいと思います。
論理的思考力(プログラミング的思考)の育成
突然ですが、プログラミングで大切なことは何でしょうか?
プログラミング言語をよく知っていること?プログラムエラーが出てもあきらめない心?
それらももちろん必要なことですが、プログラミングをするうえで欠かせないのが「論理的思考力」です。
また、この「論理的思考力」は、「プログラミング的思考力」とも言われることが多いです。
プログラミング的思考力とは?
プログラミング的思考力は「ある一連の動作をさせるために、いろいろな動きをどういった順番で組み合わせていけば良いか論理的に考えていく力」のことです。
簡単に言うと、「この動作をするには、あの動作とあの動作を組み立ればいい」と考えていける力のことです。
プログラミング的思考をする流れはこのようになります。
- コンピュータにどのような動きをさせたいかはっきりイメージする
- コンピュータにどんな動きをどの順番で行えばいいのか考える
- 一つ一つの動きを対応する命令に置き換える
- これらの命令をどう組み合わせれば自分がイメージした動作をさせられるかを考える
- 命令の組合せをどう改善すればイメージした動作により近づけられるか試行錯誤する
例えば、ロボットを歩かせたいと思えば、このようなプログラミング的思考になります。
- ロボットを歩かせたいとイメージする
- 最初に右足を出して、次に左足を出してと考える
- 「右足を出す」「左足を出す」という命令に置き換える
- 「右足を出す」「左足を出す」 という命令を交互にすることで、歩かせられるイメージをする
- ロボットが倒れてしまうなら、どう改善すればいいか試行錯誤する
こういったことをコンピュータやロボットにさせたいと思ったときに、当てずっぽうや何となくで、命令を考えていくのではなく、論理的にこうすればいいはずと考えることがプログラミング的思考力の育成につながります。
小学校のプログラミング教育の中では、このプログラミング的思考をするような課題が与えられ、子どもたちはその課題を試行錯誤して実施することで、この力の育成が期待されています。
プログラミング的思考がなぜ必要なの?
では、どうしてプログラミング的思考を付ける必要があるのでしょうか?
それは、これからの社会変化に適用するために必要な力だからです。
これまでの教育では、知識をたくさん暗記したり、決まった物事を決まった通りに行えることが学校のテストや学校での行動で評価されてきました。
しかし、世の中がグローバル化で世界中(特にアジア)から、より人件費が安い人材が入ってきたり、インターネット技術によって知識は検索すればすぐわかるものになったりと、世の中は大きく変化しています。
そのような世の中の変化に適用できるような力の一つが、「プログラミング的思考」です。
プログラミング的思考は、プログラミングだけではなく、様々な問題・課題を解決するために具体的な方法を考え、それらを論理的に組み合わせて実行していく力になります。
つまり、この力は将来的に社会が変化して、いろいろな問題が自分の前に出てきたときに対応していくときの助けになるのです。
そして、このような論理的な思考力はすぐに身に付くものではないため、小学生のうちから徐々につけさせていくことが期待されているのです。
情報を活用するための知識や能力の習得
最近は、スマートフォンの普及で、小学生であってもスマホでSNSやYouTubeなど、コンピュータを使った情報消費や情報発信が活発になっています。
ただ、一方でそういった情報技術がコンピュータやプログラムの上で成り立っているということに気が付きづらくなっていると言われています。
コンピュータやプログラムが身の回りにあることに気づく
小学校でのプログラミング教育を通じて、コンピュータがプログラムで動いていることであったり、コンピュータにも得意なことや苦手なことがあることを学んでいきます。
また、社会の中で、どれだけ多くのコンピュータが使われ、世の中を便利にしているかに気が付くことで、情報社会でどのようにコンピュータを活用していけば良いか学ぶこともできます。
特に小学生の段階では、国の有識者会議でも、「身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。」が重要であるとされ、その実施のためにプログラミング教育が活用されていきます。
プログラミングの技能を覚えること自体は目的でない
プログラミングをする際には、プログラミング言語の使い方を覚え、コンピュータの操作方法を覚えるなどが必要です。
実際に、小学校でプログラミング教育するときにも、それらの説明はされていくでしょう。
しかし、プログラミング教育の目的は、プログラミング言語の習得ではありません。プログラミングの知識や技術を持つ子どもを育てることが自体が目的ではないのです。
上で解説したように、プログラミング的思考の育成や、コンピュータが活用されていることに気が付くことが主な目的になります。
でももちろん、プログラミングに興味を持って、プログラミング言語やスキルを学んでいくことは全然良いことです。(興味があることを学んでいく姿勢は大切です)
小学生、中学校のころは難しいプログラミング知識は分からないこともあるため、ビジュアルプログラミング言語と言われる言語を使って学習し、高校から本格的なプログラミング言語を学んでいくのもおすすめです。
下記ページでは、小学生も学べるビジュアルプログラミング言語のおすすめ言語をまとめています。
プログラミングを通じて、各教科の学びを深める
プログラミング教育が始まっても、「プログラミング」という新しい教科ができるわけではありません。
これまでの教科の中で、プログラミングが取り入れられていきます。特に、算数と理科はプログラミングを用いて、その教科の学びを深めていく教育がされていきます。
例えば、算数でいくと、作図のやり方をまずは紙で手書きし、その性質を学んだあと、プログラミングを行っていきます。プログラミングでは、どのように画面上のペンを動かしていけば、思い通りの図形が作図できるか考えていきます。
そのような学習をすることで、どうすればイメージ通りの図形が描けるか理解することにつながり、その単元の学びを深くすることができます。
具体的な授業内容は以下のページでも公開しています!
小学校でプログラミング教育をする背景
では、小学校でプログラミング教育をする背景について考えていきたいと思います。
プログラミングというと専門的なことを学ぶ理系の人たちだけが学ぶイメージですが、小学生の義務教育で全員学ぶのはなぜなのでしょうか?
その理由には大きく2つの理由があると言えます。
- グローバルでの競争力の低下
- IT人材の不足
プログラミング必修化の背景① グローバルでの競争力の低下
2019年にスイスの有力ビジネススクールIMDが「世界競争力ランキング」というランキングを発表しました。
そのランキングでは、日本は30位となっており、1位はシンガポール、2位香港、3位アメリカという結果になりました。また、アジアでは中国が14位、韓国が28位で、日本より上位でした。
実は、日本はこのランキングで1980年代は1位を獲得しています。
このように日本の国際競争力は年々低下しており、最新の情報技術(AIやビッグデータなど)の活用という観点でも他国より導入が遅れている現状があります。
小学校~高校でのプログラミング教育で、情報活用の人材の育成につなげて、この現状を変えていくことが期待されていると言えます。
プログラミング必修化の背景② IT人材の不足
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で79万人のIT人材が不足する予想が出ています。
小学校からのプログラミング必修化によって子どもたちの情報技術への関心を高めていき、将来的なIT人材の確保につなげる背景があります。
プログラミング教育の現状
ここまで、日本でのプログラミング教育について解説してきましたが、他の国ではどのような教育が行われているのか見ていきたいと思います。
イギリスのプログラミング教育
イギリスでは、2014年から、「Computing」(コンピューティング)というカリキュラムができ、プログラムのアルゴリズムの理解や、デバッグについての理解などコンピュータサイエンスを教えています。
プログラミング技術や実践的なプログラミング学習も取り入れられており、情報技術を学んでいこうというイギリスの教育方針が現れています。
日本では、プログラミング技術より、プログラミング的思考力といった「考え方」を育成することを重視しているため、イギリスのプログラミング教育とは異なると言えます。
アメリカのプログラミング教育
アメリカは、各州や学校によってどのようなプログラミング教育が行われるかが異なり、学校の裁量次第になっています。
コンピューターサイエンスなど、プログラミングを学ぶことができますが、日本と違い国としての必修化はなく、選択教科として学ぶことができるようです。
アメリカらしく、自分の学ぶことは自分で決めて学習していく方針なのかもしれません。
韓国のプログラミング教育
中学校は2018年からプログラミング必修化され、小学校は2019年から必修化されました。小学校では、5年生と6年生がプログラミング教育を受けています。
これまで、一部の学校でプログラミング教育の試験的導入が進められてきていましたが、今後はより本格的な導入が始まっていきます。
インドのプログラミング教育
インドではIT教育を積極的に進めており、小学校、中学校に当たる初等教育からコンピュータサイエンスの授業が行われています。国全体でプログラミング必修化はされていませんが、各学校でプログラミング教育が実施されています。
まとめ:プログラミング教育は現状の教育を変えるきっかけ
ここまでで、プログラミング教育の目的やその背景に関して解説してきました。
また、各国でのプログラミング教育の事情も見ていただけたと思います。
日本のIT人材の不足や競争力の低下、各国のプログラミング教育の強化など様々な理由があり、プログラミング教育が必修化されました。
プログラミング教育は、次の時代の人材育成を目指すもので、 これまで行ってきた日本の教育を変えていくきっかけになると考えています。
今後は、プログラミング教育の結果や成果が出てくると思いますので、それらを総合的に見て国全体でプログラミング教育の真価を見極めていく必要があると言えます。