2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されます。
これは、新しい学習指導要領になり、プログラミングの実践が明記されるためです。
しかし、なぜ2020年のタイミングでプログラミング教育が必修化されるのでしょうか?
その背景から見ていきたいと思います!
目次
プログラミング教育開始の背景
プログラミングの必修化の背景には、大きく2つの理由があります。
- グローバルでの競争力の低下
- IT人材の不足
グローバルでの競争力の低下
2019年、スイスの有力ビジネススクールIMDが「世界競争力ランキング」というランキングを発表しました。
世界競争力ランキングとは?
世界の主要60か国・地域を対象に、企業にとってビジネスをしやすい環境がどれほど整っているかを基準に順位をつけ 、経済力、物価、雇用、対内投資などの「経済状況」、財政状況、法人税率、ビジネス法制度、公的機関の対外開放度などの「政府の効率性」、経営者の意識、金融環境、労働市場、文化の閉鎖性などの「ビジネスの効率性」、基礎インフラ、科学インフラ、外国語能力、通信費などの「インフラ」 の計300を超える項目について調査・集計している。
コトバンク より引用
それによるランキングで、なんと日本は30位でした。
なお、1位はシンガポール、2位香港、3位アメリカとなっており、他には、アジアでは中国が14位、韓国が28位で、日本より上位という結果になりました。
実は、日本はこのランキングで1980年代は1位を獲得しています。
しかし、最近は25位前後となっており、競争力はだんだんと低下している現状があります。
この国際競争力を測る基準として、いくつかの指標がありますが、特に日本が低かった指標が、「ビジネスの効率性」でした。
主に、企業の意思決定の遅さや、ビッグデータの活用が遅れていることが評価の低下につながっていることが分かったのです。
つまり、各国でグローバル化が今までにないほど急速に進んでいるのに、日本の企業がそのスピードについていけず、取り残されつつある現状が、この指標で表れていると考えられるでしょう。
IT人材の不足
2019年に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、IT関連の市場が伸びた場合、2030年には最大で79万人のIT人材が不足するという試算が出ています。
IT技術の発展とともに、その技術者も必要になっており、将来的にITがさらに発達して需要が増えれば、IT人材は確実に不足するでしょう。
どんなITが広がっている?
ここで、今そして将来、どのようなIT技術が広がっていくか見ていきたいと思います。
- IoT(Internet of Things)
車や家電など、様々なモノがインターネットでつながり、新たなサービスが生まれる
- ビックデータ
多くのデータを収集・解析して、交通渋滞や、鉄道の混雑などの予測につなげる
- 人工知能
高度な画像解析や、将棋や囲碁などのゲームでも活躍し始めている
これらの技術進化によって、IT市場は伸びていくため、それら技術を扱うことができるIT人材が将来的に多く必要になるでしょう。
しかし、上記で、IT人材の不足がすでに予測されており、人材育成の面からプログラミング教育を取り入れているのです。
つまり、、
グローバルでの競争力の低下と、将来的なIT人材の不足を背景に、最新技術を素早く取り入れて、ビジネスに活かすことができるIT人材の育成が必要となっているのです。
そして、プログラミング教育を小学校、中学校に導入することで、ITスキルや論理的な思考力を持つ若年層を今から育てていき、2030年には新卒人材として活躍することを期待しているのです。
これからの時代に必要な力とは?
急速なグローバル化や、IT人材が不足するのを背景に、プログラミング教育が始まっていきます。
つまり、これからの時代に必要な力は「ITスキル」ということなのでしょうか?
それは、少し誤解があるかもしれません。
では、これからの時代で活躍するための力とは何なのでしょうか?
今後活躍するために必要な力
将来的に必要となるであろう力を、3つ挙げていきます!
- 情報を見極める力
- 論理的な思考力(プログラミング的思考)
- 自己表現力
情報を見極める力
現在、一人一台スマホを持つようになり、何か調べるときも、インターネットで検索すれば、すぐ答えが出てくる時代になりました
何か検索すれば、何百、何千万件と検索結果がでてくるよね
だれもが多くの情報を調べることができるようになり、便利になりましたが、それと同時に、情報が多すぎて、どれが正しい情報が判断するのが難しくなりました。
最近でもSNSなどで、誤報やデマがすぐに広がるのも、情報をよく確認せずに信じてしまう部分があるからでしょう。
そこで重要になるのが、「情報を見極める力」です。
これは、多くの情報を得られる中で、自分に必要な情報や、正しい情報を探し出すことができる力となります。
この力によって、誤った情報に振りまされず、自分が間違った情報を相手に伝えることも抑えることができます。
また、良い情報をつかんだときには、自分の仕事やビジネスチャンスに活かせるようになるのです。
このような力は、「情報活用能力」とも呼ばれ、情報を主体的に選択し、活用していく力です。
「言語能力」や「問題発見・解決能力」とともに、学習の基盤となる資質・能力の1つとされています。
新しい学習指導要領では、プログラミング教育だけでなく、この「情報活用能力」も育てる授業も実施され、学んでいくことが求められます。
論理的な思考力
だれかに何かを説明するときに、必要な力とは何でしょうか?
情熱?積極性?
それらも大切ですが、相手が自分の言っていることを理解してくれるようにするためには、「論理的」に伝える力が必要になります。
例えば、「これは○○となります。なぜなら『理由』だからです」といったように、自分の意見などを伝えるためには、論理的に筋道を立てることで、伝わりやすくなります。
さらにディスカッションなど相手を説得させる場合は、よりこの力が必要となります。
「自分がこう思うから」や「これが正しいはず」といっただけでは、相手は納得せず、しっかりとした論理で説明していくことが求められます。
小学校から始まるプログラミング教育では、このような論理的な思考を育てることが目的になっています。
プログラミングは、パソコンへの命令(コマンド)を、プログラミングのルールに従って組み立てていくことで動作させることができます。
つまり、コマンドを論理的な筋道を立てて、組み合わせていくことが必要であり、そのような力は、「プログラミング的思考」と呼ばれています。
つまり、プログラミング教育によって、「プログラミング的思考」を育て、論理的な考えを身につけることが期待されています。
自己表現力
この力は、自分の意見や考えを、人前で発表したり、プレゼンしたりすることで、自分の考えを相手に伝えることです。
一般的には、自己表現力は、日本人が苦手とされている力かもしれません。(なかなか自分の意見を言えず、周りに合わせてしまうなど)
しかし、グローバル化による競争が進む中で、自分の考えをしっかり表現し、その競争で活躍できる人材が求められています。
プログラミング教育の中では、この「自己表現力」を育てる工夫がされています。
例えば、算数の時間に、プログラミングをして、正三角形を作図するというものがあります。
生徒たちは、まず自分でどのようにしたら正三角形を書くことができるか考え、プログラミングをしていきます。
そしてそのあと、自分が考えた方法をみんなの前で発表していきます。
プログラミングで、正三角形を作図する方法はいくつもあります。(正解は一つではない)
生徒たちは自分がどう考えて作図したかを他の生徒に発表することで、相手に自分の考えを伝える訓練をすることができます。
これが「自己表現力」を鍛えることにつながっていくのです。
まとめ
これからの時代に活躍するための力として、「情報を見極める力」、「論理的な思考力(プログラミング的思考)」、「自己表現力」が重要となってきます。
新学習指導要領では、これらの力を育てることができるよう、プログラミング教育を導入していくでしょう。